世界の中心で、愛をさけぶ

柴咲コウの言葉によって爆発的に売れた本。確かに感動的な物語だったけど、「涙が止まらない」というわけにはいかなかった。この作品の根底にあるのは愛する人の死によってもたらされた圧倒的な喪失感。
僕は、幸運なことかもしれないが、今まで身近な人が死んだことがない。もちろん、友達と仲違いして絶交してしまったことなどはあり、それは相当の喪失感をもたらしたが、それでも「同じ世界に存在している限り、また何かの機会があれば会うことだって出来るかもしれない」という思いがある種の救済になっている。
だが、死んだ人は戻ってこない。どうやっても、二度と会うことは出来ない。その喪失感を、未だ僕は体験したことがない。もちろん、それがどのように辛くて苦しいものかを想像することは可能だが、想像と体験はやはり別物だと思う。だから、恐らく主人公の本当の苦しみが自分には100%伝わっては来ないのだと思う。
まぁ「こんな感動する本を読んで涙が出ないなんて、本当は血も涙もない冷血人間じゃないの?」と思いたいなら思えばいい。どんな話に感動し、涙するかは人それぞれなのだ。僕だって、『るろうに剣心』で落人群にいる剣心が再び立ち上がるところや、『DRAGON BALL』の魔人ブウ戦で元気玉を集めるシーン、その後ベジータを救出するサタンの行動を見るたび涙するんだ。